君が生きている
「君が生きている」 そのことが何よりも大切だと思いたい そのことが愛の形の一つだと思いたい。
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一重まぶたです

北海道在住のクリスチャン
しかし、周りとあわせることが出来ないクリスチャンです
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歩くのをやめた鳥
久しぶりの小説です
前回の「穴の空いた狼」
http://hitoemabuta56.blog87.fc2.com/blog-entry-9.html
の続きになります


「歩くのをやめた鳥」

ある晴れた春の日に僕は殻をやぶった

太陽は眩しくて、暴力的で、僕は顔をしかめた

だけど、見慣れてくるとそれはとても綺麗なことに気がついた

そうやって、空を見上げていると僕はお腹が空いたことに気がついた

お腹が空いてぴいぴい鳴いていたらお母さんが餌をとってきてくれた

僕はそれが当たり前のことだと思っていた

それに僕は僕がそういうものだと思っていた

だけど、ある暑い夏の日に他の兄弟達が僕にこう言った

「そろそろ僕等もここを出て行くか」

え、なんて言ったんだい

僕がその言葉の意味も確認する間もなく、兄弟達はひろいひろい空へと旅立っていった

ああ、僕等は飛べるのか

ああ、僕も行かなくちゃ

僕も行かなくちゃ?

いったいどうやって?

分からない

だけど、兄弟達は飛びたてたんだ

僕にだってきっと出来るはず

そう思って僕は、思い切り巣から飛び降りた

羽ばたくことを知らなかった僕の羽は、思い切り地面に叩きつけられ曲がってしまった

いたい いたい

僕は飛べなかった

ああ、ああ、僕は飛べなかった

僕はよれよれと歩きながら、うっそうと生い茂った森の中をさまよう

ここはどこだろう

僕は怖くて怖くてたまらなくなって、近くの藪に身を潜めた

そこには野いちごがあって、僕はそれを食べて過ごしていた

そうやって何日も過ごしている間に、その藪の周りでは色々なことが起こっているのが分かった

僕以外にも色々な僕みたいなのがいること

四足で歩く動物がいること

その中でも、草を食べる動物

その草を食べる動物がいることを僕は知った

なんてことだい

空を飛べない僕は、ひょっとして一番弱いんじゃないか

怖くなって怖くなって、僕はずっと藪の中に身を隠していた

だけど、その藪の中の野いちごがなくなったときに

僕は藪の中から出ることを余儀なくされた

こわい

藪から出たら、あの狼達に食べられてしまう

だけど、飢えて死んでしまうのも勘弁だ

僕は意を決して藪の中から出た

すると、目の前にはあの恐ろしい狼がいた

なんてことだい

僕は、食べられることを覚悟した

もう、どうにでもなれ

だけど

狼は僕には目もくれず、逃げる豚を追いかけてそれを食べていた

僕には目もくれずに

僕は不思議に思って、うっそうと生い茂る森を歩く

すると、僕は気づいた

彼らは逃げるものしか捕まえない

僕には逃げるための翼が曲がっている

だから、僕は食べられない

ああ、そうか

僕は食べられることすら出来ない

僕は

一人だ

この世界に

僕は一人だ

そう思うと、僕はなんだか悲しくなった

ああ、ああ、なんて悲しいんだ

なんて悲しいんだ

そう思いながら、僕は森の中をさ迷い歩く

昼も夜もさ迷い歩く

誰かいないのか

僕みたいなのが他に誰もいないのか

誰か、僕以外にいなのか!?

誰か、僕を見てくれよ!

泣きながら僕は森をさ迷い歩く

すると

木の実を食べている狼がそこにいた

お腹を押さえ、みっともない格好で木の実を食べる狼がそこにいた

周りの狼が彼を見ながら、笑いながら何か言っている

「君はもう狼じゃないね」

彼らはそう言っていた

ああ

彼も一人だ

この世界に彼も一人だ

仲間がいた

僕はそう思って、嬉しくなった

そして、彼に話しかけた

「やあ、ごきげんいかが」

すると彼はいきなり、その大きな口で僕を丸呑みした

なんだってそんなことをするんだい

だけど、僕は外に出ることが出来た

彼のお腹には大きな穴が空いていたからだ

なんだい、こいつは

狼のくせに果物を食べて、逃げもしない獲物を丸呑みする

僕は少し腹が立ったけど、彼が泣いている事に気がついた

なんで、君は泣いているんだい?

そんなこと、口には出せない

だから僕は社交辞令でお茶を濁すことにした

「ごきげんよう、虫歯に気をつけて」

そう言って僕は彼を後にした

僕は、彼の口は果物の匂いがしたな、と思いながら森の中をまた歩く

だけど今度は、さ迷っているんじゃない

僕と同じような別の動物を探すために

僕は森の中を歩く

昼も夜も森の中を歩く

だけど、木の葉が赤くなる時期になっても僕のような動物はいなかった

そう

あの狼以外には

ああ

あの狼しかいないのか

僕の仲間はあの狼しかいないのか

世界に一人ぼっちなのは、彼と僕だけ

もう一度話しかけよう

「やあ、ごきげんいかが?」

そう言うと、僕はまた狼の口の中に入れられた

だけど、彼は僕をすぐに飲み込まず翼を噛み砕いてから飲み込んだ

僕は、彼の穴から出てきたが激しい痛みに顔が歪む

いたい

なんで彼は食べれもしないのに僕を飲み込むのか

そして、なんだってあまつさえ翼を噛み砕くんだ!

僕は悔しくなって、狼に言い放った

「君は、狼じゃないね」

彼の存在を否定することしか、もう僕には出来なかった

だけど、彼はその言葉を聞いて声を出さずに涙を流していた

だけど、そんなことは知ったことじゃない

僕のほうが泣きたいのだから

それから、僕は痛みに耐える日々が続いた

激しい痛みが、昼夜を問わず僕を襲う

いたい

激しい痛みが、昼夜を問わず僕を襲う

だけど、そんな日々も終わりを告げて痛みが引いた時

僕の翼は真っ直ぐになっていた

僕は羽ばたいてみた

すると、僕の体は浮くことに気がついた

ああ、飛べる

僕は飛べる!

僕は、世界に一人ぼっちじゃなくなった

僕は世界に入れたんだ!

それから、僕は飛び回った

そして、野いちごではなくて虫を食べるようになった

初めて捕まえた蝶は、紐が折り重なって出来ているような姿でよろよろと飛んでいた

僕は、彼なら食べられると思い

彼を捕まえて、むしゃりと食べた

それから、僕は自信をつけて色々な虫を食べるようになった

僕は、世界に生きている!

その達成感が僕を酔わせていく

自分の口が臭くなっていることに気がつかずに

そうして、飛んでいるとあの狼がまた見えた

彼は相変わらず、みっともない格好で野いちごを食べている

だけど、その時僕は思い出した

彼の口からは、果物の匂いがしたことを

そして、自分の口の臭さに気がついた

ああ、僕は臭い

世界に出て、僕はこの臭い口を手にいれた

なんで?

いくら考えてもその答えは出てこなかった

だって、僕の口は臭いのだから

いたたまれない

僕は、臭い口が欲しくて世界に出たのか?

いや、違うはずだ

そもそも狼が羽を真っ直ぐにしなければ、こんなことにはならなかったのに!

だから、僕は狼に文句を言うことにした

狼が野いちごを食べている時に、僕は狼に話しかける

「やあ、ごきげんいかが」

彼は何も反応をしてくれない

寂しい

ちょっと待ってくれ

なんで僕は寂しいんだ

もう僕と彼は違うはずなのに

もう僕は、世界で一人ぼっちではないはずなのに!

「無視しないでくれよ、君と友達になりたいんだ」

僕は、気がついたらそう言っていた

狼は僕に言う

「馬鹿にしないでくれよ なんで君は僕と友達になりたいんだ」

ぐっと悲しみをこらえる

言いたいことはたくさんある

世界のこととか、臭い口のこととか

だけど

そんなこと、言ってどうなるっていうんだ

「泣きながら食べられる身にもなってくれ せめてもっと美味しく食べられたいんだ」

僕は精一杯の強がりを彼に言った

すると、彼は呆気にとられて

そして、少し笑ったんだ

僕はその時

ようやく欲しかったものが手に入った気がした

狼と僕は一緒に木の実を食べる

周りの狼は笑う

僕等はそれを見て互いに笑いあう

周りの狼は笑いながら言う

「君は狼じゃないね」

僕も狼に笑いながら言う

「君は狼じゃないね」

狼は僕に笑いながら言う

「僕は穴の空いた狼だよ」

彼の言葉を聞いたとき、僕はとても満足した

そして、彼は羊に会いに行くと言い森を出た

僕は、彼の帰りを待ちながら木の実を食べる

周りの狼がそれを見て笑う

「お前は、惨めだな あんなのと一緒にいて」

それを聞いた僕は、周りの狼に言う

「臭い口をぷんぷんさせながら、いい気になっている奴らよりはましさ」

その言葉を聞いた狼は、怒りにまかせて僕を食べようとした

僕は、飛ばずにそれを受け入れた

ああ、やっぱり彼らの口は臭かった

そうして、僕は食べられた





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