君が生きている
「君が生きている」 そのことが何よりも大切だと思いたい そのことが愛の形の一つだと思いたい
穴の空いた狼
小説をまた書きました


【穴の空いた狼】


僕のお腹には穴が空いている

だから今は何を食べてもこの穴から出てしまう

昔は色んなものを食べた

牛、羊、鳥、豚

昔は色んなものを食べた

逃げる動物を追いかけて、それを食べる

それが僕の誇りだった

だけど今は何を食べてもこの穴から出てしまう

ああ、なんて惨めなんだろう

あの時、春の陽気に浮かれて森を散歩していた僕を責め立てたい

森の木から差し込む日の光や、春の香り

それが僕の勘を鈍くしていた

春の日突然、僕は誰かが作った落とし穴に落ちた

穴の中には尖った杭がさしてあった

その瞬間僕は絶望して

その時、僕のお腹に穴が空いた

いたい、いたい

穴から必死に出た僕は、自分のお腹に穴が空いたことを泣いた

なんだって僕がこんな目に

なんだって僕がこんな目に?

なんだって僕がこんな目に!

悲しみはいつしか怒りへと姿を変えた

ちょうどその時だった

一匹の小鳥が歩きながら僕に話しかけてきた

「やあ、ごきげんいかが」

なんだって君はそんなことを言うんだい

怒り狂った僕は彼を丸飲みした

すると彼はお腹の穴から出てきて、こう言った

「ごきげんよう、虫歯に気をつけて」

ちくしょう、ちくしょう

僕は小鳥にさえ馬鹿にされるのか

いつしか僕は獲物を狩るのを諦めて

森の木の実を食べることにした

二つの前足でお腹の穴を抑えながら

みっともないかっこうで木の実を食べる

周りの狼が僕を笑う

「君はもう狼じゃないね」

そう言いながら僕を笑う

ああ、全くその通りだよ

怒りは薄れ悲しみが波のようにやってくる

あの小鳥が歩きながらまた僕に話しかけてくる

「やあ、ごきげんいかが」

僕は彼を口に含み

翼を噛み砕いた後に、飲み込んだ

彼は穴から出てきてこう言った

「君は狼じゃないね」

僕は小鳥の言葉に涙した

小鳥が歩いて去っていった後に僕はいてもたってもいられなくなり

森から姿を消した

うっそうと生い茂った森から姿を消して

僕は太陽が照りつける草原にいた

そこには一匹の羊がいて、僕に話しかけてきた

「君はなんで泣いているんだい」

「お腹に穴が空いているからさ」

羊は不思議そうな顔をして僕に言葉を続ける

「なんで君はお腹に穴が空いていると泣くんだい?」

「僕はもう木の実しか食べれない 僕はもう狼じゃなくなったんだ」

羊は言葉を続ける

「じゃあ、君はなんなんだい?」

「狼じゃない僕は僕じゃない だから僕は僕じゃないんだ」

羊は眉間にしわをよせてこう言った

「僕がそのお腹の穴を縫ってあげようかい」

僕は驚きながらこう言った

「いいのかい、僕は君を食べてしまうよ」

すると羊は悲しそうな顔をして言った

「それじゃあ、駄目だ 僕が君に食べられると僕がいなくなってしまう」

僕も悲しそうな顔をして言った

「期待させないでくれ 君はなんてひどいやつなんだ」

羊はすまないと言って僕の前から姿を消した

僕は一人で泣いていると

穴の空いたお腹が鳴くのに気がついた

ああ、そうか

ここには木の実も無いんだな

ああ、そうか

僕は森に戻らなきゃいけないのか

僕は泣きながら森に戻った

僕はみっともない格好で木の実を食べる

周りの狼は僕を笑う

あの小鳥は空を飛んでいる

僕はみっともない格好で木の実を食べる

周りの狼は僕を笑う

あの小鳥は蝶を捕まえて食べている

僕はみっともない格好で木の実を食べる

周りの狼は僕を笑う

あの小鳥が僕に話しかけてくる

「やあ、ごきげんいかが」

僕はみっともない格好で木の実を食べる

「無視しないでおくれよ 君と友達なりたいんだ」

僕は小鳥に言葉を返す

「馬鹿にしないでくれよ なんで君は僕と友達になりたいんだい」

小鳥は僕に話しかける

「だって君は泣いているじゃないか」

僕は泣きながら小鳥に言う

「君には関係ないだろう」

小鳥は返事をする

「泣きながら食べられる身にもなってくれ せめてもっと美味しく食べられたいんだ」

僕はその言葉を聞いて

呆気にとられた

そして

久しぶりに

少し笑えたんだ

「ありがとう」

僕は小鳥にそう言い、彼と友達になった

小鳥と僕は一緒に木の実を食べる

周りの狼は笑う

僕等はそれを見て互いに笑いあう

周りの狼は笑いながら言う

「君は狼じゃないね」

小鳥も僕に笑いながら言う

「君は狼じゃないね」

僕は小鳥に笑いながら言う

「僕は穴の空いた狼だよ」

小鳥は笑いながら、その通りだねと言った

ああ、いつかの羊にも言いに行こう

僕は穴の空いた狼だっていうことを


終わり



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成長という言葉の残酷さ
教会でよく「成長しましょう」という言葉を聞く
僕はその言葉が嫌いだ、ものすごく嫌いだ
クリスチャンは成長するものだというよように言っているようで聞くのがとてもつらい
僕の友達に、ダウン症の人がいる
彼にどんな成長を望めと言うのか

そう、成長という言葉は健常者だけに許されている
アルツハイマーにかかった人はどうすればいいのか
筋ジストロフィーにかかった人に奉仕をすれというのか
意識があるだけで、体が全く動かない難病の子供に「成長しなさい」と言うのだろうか

神様は僕等に何を望んでいるのか
それは成長して、立派な人間になることか
僕は違うと思う
幸せに生きること
周りの人と笑顔で過ごすこと
そのことを望んでいるように思えて仕方が無い

たとえ異言を言おうと天使の言葉を言えても、愛が無ければ何の意味も無い
山を動かすほどの完全な信仰を持っていても愛が無ければ意味が無い
そう言っているのは聖書だ
それと同じように、どんなに立派な人間に成長しようと愛が無ければ意味が無い

愛するということを考えた時に、安易に「成長しましょう」なんて言えないはずだ
成長できない人たちもこの世の中にはたくさんいるのだから
そんな人たちに「成長しましょう」と言うとき、そこに愛はあるのか

信仰、希望、愛
この中で最も偉大なのが愛だ

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とてもとても大きな繭
僕は今地面を這っている

かなり先に生まれた友達はみんな空を飛んでいる

僕もきっときっとああやって空を飛ぶんだろう

少し先に生まれた友達が蛹になろうとしていた

木の上で蛹になろうとしていた彼は

鳥についばまれて地面に落ちてしまった

よく見ていたら

たくさんの友達が、鳥に食べられている

やあやあ、僕はそんなことにはなりたくない

そう思って

僕はたくさん糸を吐いた

たくさんたくさん糸を吐いた

みんなはサナギになるのに、僕はとても大きな繭になった

それでもそれでも僕は足りない

もっと大きな鳥が来たらどうしよう

だから僕は糸を吐く

たくさんたくさん糸を吐く

そうしたら

僕はとてもとても大きな繭になった

鳥は僕を食べない

だけど

僕はここから出れないことに気がついた

「君はなんでじっとしているの?」

誰かが僕にそう言った

「この中から出れないんだ」

「そうかい、それは大変だ 転がることも出来ないのかい?」

「あ」

僕はそんなことにも気がつかなかった

「ありがとう」

そう言って僕は転がることにした

ゴロゴロゴロ

やあやあ、僕は自由に動けるじゃないか

空は飛べないけれども僕は自由に動けるじゃないか

そう思って僕は転がっていたら

端っこがどこかに引っかかってしまった

それでも僕は転がった

もう、止められないんだ

転がりはじめると止まれないんだ

そうしていくうちに、だんだん繭が小さくなっていく

イヤだイヤだ

僕の中身が出てしまう

僕の中身が出てしまう

鳥に食べられる

あのくちばしでついばまれるんだ

だけども繭はとまらない

だんだん小さくなってく僕の繭

周りのサナギと同じくらいになってしまった

中身が出るまでもう少し

イヤだイヤだ

そう思っていても繭は止まらない

イヤだイヤだ!

でも、止まらない

そうして繭はいつしか一本の紐になっていた

そして

僕の中身が表れた

僕の中身は

空っぽだった

ああ

そうか

僕は繭だったのか

僕は繭だったのか

「どうしよう」

僕はもう転がれない

もう、地面を這うことも出来ない

泣きたいけれど

泣く事だって出来やしない

「ずいぶん長くなったね」

僕に転がることを教えてくれた彼がそう言った

「うん、もう何も出来ないんだ」

僕はそう言った

「ねえ、僕が君を編んであげようかい?」

「え?」

「いいよ、君が望むものに僕が編んであげるよ」

彼はそう言った

僕は考えた

マフラー?

セーター?

でも

やっぱり僕は

「僕は、蝶になりたい」

「うん、わかったよ」

彼はにっこりほほ笑んで、僕を編み始めた

そうして、僕は少し不細工な蝶になった

「良かったのかい? 鳥に食べられるかもしれないよ?」

「うん、そうだね」

「だけど、やっぱり僕は空を飛びたかったんだ」

「そうかい」

彼はほほ笑んで姿を消した

そうして僕は飛んでいる

僕は飛んでいる

空ってとても綺麗なんだ

花ってあんなに綺麗なんだな

ああ

ああ

とてもいい

そして

僕は鳥に食べられた

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